自己破産|国民健康保険の一部負担金減免申請不承認処分の取り消し

主文

1 仙北市長が平成18年11月21日付けで原告に対してした国民健康保険一部負担金減免申請不承認処分を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求

主文第1項と同旨

第2 事案の概要

本件は,原告が,被告に対し,原告の平成18年10月26日付け国民健康保険一部負担金減免申請を同年11月21日付けで不承認とした仙北市長の処分が違法であるとして,この処分の取消しを求める事案である。
1 前提事実
(1)ア被告は,国民健康保険法(以下,単に「法」という。)3条1項に基づく仙北市国民健康保険の保険者である(争いのない事実)。
イ原告は,母,妻,長男,二男の5人世帯(世帯主は原告)であり,その全員が仙北市国民健康保険の被保険者である(争いのない事実)。
平成18年当時の原告世帯の収入は,原告及び母の桜皮細工製造業による収入,スーパーマーケットで働く妻の給与収入,母の国民年金収入であった(争いのない事実)。
(2) 被告においては,仙北市国民健康保険税条例及び同施行規則が定められ,地方税法717条を受けて,世帯の収入が生活保護基準以下の者で,就学援助等の公的扶助を受けている者又は公私の扶助を受けている者と同程度の生活困窮状態にある者等については,保険税を全額免除することとされているところ,平成18年7月,原告は,同年度の国民健康保険税22万0800円の減免申請を行い,仙北市長は,原告世帯の収入が生活保護基準を上回るとして,この申請をいったん不承認としたが,その後,原告の異議申立てを受け,同年12月,原告世帯の収入が生活保護基準額を下回ると判断し,前記不承認決定を変更して,原告の同年度の国民健康保険税を全額免除する決定をした(争いのない事実,甲7,8)。
(3) 被告においては,法44条を受けて,国民健康保険一部負担金(以下「一部負担金」という。)の減免について,別紙1のとおり仙北市国民健康保険一部負担金の徴収猶予及び減免取扱要領(以下「本件取扱要領」という。)が定められている(争いのない事実)。
(4)ア原告の母は,平成18年8月2日,脳梗塞を発症して,同日から同月15日まで市立角館総合病院に入院し,その際,胃のポリープが発見され,同年9月28日から同年10月20日まで,検査のため同病院に入院した。
その結果,胃がんであることが判明し,同月30日から同年11月28日まで及び同年12月2日から同月8日まで同病院に再入院し,胃の摘出手術を受けた。
これによって原告が負担することになった一部負担金等は,以下のとおりである(争いのない事実)。
一部負担金入院食事負担金等
平成18年8月4万0200円1万1100円
同年9月1万1700円1970円
同年10月4万4400円1万7220円
同年11月4万4400円1万7860円
同年12月2万5070円3000円
(なお,一部負担金の負担割合は1割である。また,高額療養費が支給された月があり,上記の金額は,高額療養費支給後の負担額である。)
イ上記のとおり原告の母が入院したことにより,原告世帯の収入及び生活保護基準額は,別紙2「原告世帯の収入と生活保護基準」の左欄から右欄のように変化した(弁論の全趣旨)。
(5)ア同年9月28日,原告は,国民健康保険一部負担金減免申請(以下「減免申請」という。)をするつもりで仙北市役所に赴いたが,被告職員とやりとりをした上,同日は減免申請せずに帰宅した(争いのない事実)。
イ同年10月26日,原告は,同日付けの減免申請書を,免除の割合,期間の欄及び理由欄を空欄としたまま被告職員に提出し,仙北市長に対し,減免申請を行った(以下「本件申請」という。争いのない事実)。
ウ同年11月9日,被告職員が,原告の職場を訪れ,減免申請書の空欄部分を補正するよう求め,原告は,割合「6/10割」,期間「3か月」,理由「第2条(4)専従の母親が病気のため収入が減少するため」と記載して,これを補正した(争いのない事実)。
エ仙北市長は,同月21日付けで,本件申請を不承認とし(以下「本件処分」という。),「仙北市国民健康保険一部負担金の徴収猶予及び減免取扱要領第2条の(4)に該当するとの申請であるが,同条各号は世帯主がいずれかになった場合に減免の対象となるものであり,本申請は同条(4)に該当するとは認められない」という理由を付して原告に本件処分を通知した(争いのない事実)。
2 争点
本件処分が,法44条1項の解釈・適用を誤り,裁量権の範囲を超えた違法な処分であるか否か
3 争点に関する当事者の主張
(原告の主張)
(1) 本件取扱要領について
本件取扱要領は,減免の要件として,T同要領2条各号のいずれかの事情があること,U生活保護法の生活保護基準を目安として,前記Tの事情によりその生活が著しく困難となった場合であること,V一部負担金の支払が困難であり減額又は免除の必要があると認められることの3つを定めているが,同要領2条(3)又は(4)に該当した場合の効果(減免の範囲)については,同要領4条1項の別表において,所得皆無のとき,3分の2以上の減少のとき,2分の1以上の減少のときのみを定め,所得の減少が2分の1を超えないときについて何ら定めを置いておらず,取扱要領として形式的に不備である。
また,実質的にみても,所得の減少が2分の1以上の場合にのみ減免することには,何ら必然的根拠や立法事実がない。
そもそも,一部負担金の支払が困難であり減額又は免除の必要があるという上記Vの要件該当性を認めつつ,上記T及びUに該当しないからといって減免を認めないのは背理である。法44条による一部負担金減免制度は,相当期間継続的に一部負担金を減免することにより低所得による生活困窮者に対する救済措置として運用すべきものであり,一部負担金減免の判断においては,生活保護基準に照らした生活困窮の程度が最も重視されるべきであるから,本来,一部負担金減免について取扱要領を定める際には,生活保護基準以下の収入しかない場合と生活保護基準を超える収入がある場合は別異に規定されるべきである。
したがって,本件取扱要領は,生活保護基準以下の収入しかない場合と生活保護基準を超える収入がある場合を分けて規定していないという点,「所得の減少が2分の1を超えないとき」には全く減免を認めないこととなってしまう点の2点において不合理なものである。
(本件取扱要領に従えば,所得減少前から生活保護基準以下の収入しかなかった場合でも,所得が2分の1以下の範囲で減少したにとどまれば減免が認められないこととなるが,所得減少前から生活保護基準以下の収入の者にとっては,2分の1未満の範囲での減少であっても生活に致命的影響が生じるのであって,この場合に減免を一切認めないとすれば,減免申請者にとって非常に過酷な結果となる。)
(3) 本件処分について
前記のとおり,一部負担金減免の判断においては,生活保護基準に照らした生活困窮の程度が最も重視されるべきであるのに,本件処分に至る過程において,原告の生活困窮の程度は全く検討されていない。それどころか,原告の収入が前記前提事実(4)イ記載のとおり生活保護基準を下回っていることが判断の前提とすらされておらず,むしろ,前記前提事実(2)記載のとおり,仙北市長及び被告職員は,本件申請に先立つ国民健康保険税減免申請に対する判断において,原告の収入が生活保護基準以上であるとの誤った認識を持っていたのであり,本件処分に際しても同様の認識を持っていた。
原告世帯の収入は,母の入院前から生活保護基準の78.4%であったところ,母の入院後は生活保護基準の62.7%まで減少し(注:この数値は,いずれも原告が国民健康保険税を支払うことを前提とするものであるが,前記前提事実記載のとおり,原告は平成18年度の国民健康保険税を全額免除されている。),その結果,原告は生活が著しく困難となり,「一部負担金を支払うことが困難」になったのであるから,仙北市長は,本件申請を承認すべきであった。
以上のとおり,被告の本件処分に至るまでの判断過程では,最も重視すべき生活困窮の程度が重視されておらず,著しく合理性を欠くもので,本件申請を不承認とした本件処分には,法44条1項の解釈を誤り,裁量権の範囲を逸脱した違法がある。
なお,仙北市長は,「仙北市国民健康保険一部負担金の徴収猶予及び減免取扱要領第2条の(4)に該当するとの申請であるが,同条各号は世帯主がいずれかになった場合に減免の対象となるものであり,本申請は同条(4)に該当するとは認められない」という理由を付して原告に本件処分を通知したが,原告の母が入院したことにより,母を専従者として事業を行っていた原告が得られる収入は減少することが明らかであるから,本件申請は同条(4)に当たるのであって,本件処分は,そもそもこのような理由による点で誤っている。
(被告の主張)
(1) 本件取扱要領について
法44条1項は,一部負担金の減免許否の判断を市長の裁量に委ねており,一部負担金をどのような要件でどの程度減免するかについては,減免申請者の生活状況のほか,国民健康保険事業の財政,医療水準の維持,医療保険の維持発展,他の被保険者との公平,他の社会制度との関係など,さまざまな要素を勘案して決定しなければならない。
国民健康保険事業は,国の費用負担分,都道府県及び市町村の費用負担分,被保険者の支払う保険料及び一部負担金により運営されるものであり,特定の被保険者の一部負担金減免が認められ,同事業においてその分の費用の穴埋めの必要が生じた場合には,被保険者全体の保険料の増額を図るか,市町村の費用負担を増やすことになる。一定の所得以下の者について一律かつ継続的に一部負担金の減免を行うことは,このような国民健康保険事業の構造と相いれないものであって,不適当である。
そもそも,法44条による一部負担金減免制度は,生活保護基準以下の収入の者全般を継続的に救済するためのものではなく,一時的・突発的理由により一時的に一部負担金を支払うことが困難となった被保険者を一時的に救済するための制度である。
また,生活保護基準以下の収入の者については,一部負担金の減免ではなく,生活保護法に基づく医療扶助制度によりこれを救済すべきである。
以上からすると,本件取扱要領のとおり減免の要件・効果を定めることは,法44条により委ねられた裁量権の範囲を逸脱しておらず,適法である。
(2) 本件処分について
本件申請は,原告の母の病気・入院により,同人を専従者として事業を行っていた原告の収入が減少することが申請理由とされているため,本件取扱要領2条(4)に該当するかどうかが問題となり,その具体的判断基準は,原告の農業漁業等以外の事業に関する収入減少が申請理由とされているから,同条(3)によるところ,ここでいう「収入が著しく減少したとき」の基準を具体的に定める同要領4条1項の別表によれば,原告の収入が少なくとも2分の1以上減少しなければこれに該当して「特別の理由」があることにならない。
原告の前年の所得は175万2105円であり,母の入院後の所得見込額は140万円である。これらはいずれも母の専従者給与50万円が含まれているものであるから,これを控除すると,原告自身の前年の所得は125万2105円,所得見込額は90万円と計算され,収入の減少割合は約28%にすぎず,本件要領に定める減免要件を満たしていない。
したがって,本件申請を不承認とした本件処分は適法である。

第3 当裁判所の判断

1 法44条は,保険者は,「特別の理由」がある被保険者で「一部負担金を支払うことが困難」であると認められる者に対し,一部負担金を減免し又はその徴収を猶予することができる旨定めており,その趣旨は,一部負担金の減免許否の判断を保険者の代表たる市長の裁量に委ねているものと解されるところ,市長は,国民健康保険制度の趣旨・構造,他の社会制度との関係などを総合的に勘案し,国民健康保険制度において一部負担金減免等の制度が設けられている趣旨を踏まえて,合理的裁量の範囲内においてこれを決定すべきである。
(1) 国民健康保険制度の制度趣旨等
国民健康保険は,被保険者の相互扶助共済の精神に則り,個々の被保険者の疾病等により生じる経済的負担を被保険者全体において分担させることを目的とするものである。(なお,かかる目的からすれば,本来,被保険者の支払う保険料によって保険給付の財源が賄われるべきであるが,私保険とは異なり社会保険であることから,下記のとおり公的負担も取り入れられた構造となっている。)
(2) 国民健康保険制度の構造
国民健康保険は,他の社会保険制度の被保険者となっておらず,生活保護の受給もしていない者を,被保険者として強制加入させるものである(法5条,6条各号)。
保険者である市町村等(法3条)は,被保険者の属する世帯の世帯主が納付する保険料又は国民健康保険税(法76条,地方税法703条の4第1項),国の負担金(法70条等),調整交付金(法72条)及び補助金(法74条),都道府県及び市町村の補助金及び貸付金(法75条),市町村の一般会計からの繰入金(法72条の2第1項,法72条の3第1項)等を財源として保険給付を行う(法2条)。
被保険者は,医療機関等で診療等を受ける際には,原則として当該診療等に要する額の1割ないし3割の一部負担金を支払えば足り(法42条1項等),保険者たる市町村等が,医療機関等の請求に応じてこの残部7割ないし9割を医療機関等に支払うこととされている(法45条1項)。
保険者たる市町村は,世帯主等から保険料又は国民健康保険税を徴収しなければならない(法76条,地方税法703条の4第1項)が,保険料方式を採用した場合には,条例等を定めて保険料の減額賦課をすることができ(法81条),保険税方式を採用した場合には,一定の基準を満たす低所得被保険者に対して保険税のうち応益負担部分である被保険者均等割額及び世帯別平等割額を減額しなければならない(地方税法703条の5)。
また,保険料方式の場合,保険料の減免又は徴収猶予(法77条)を,保険税方式の場合,貧困その他特別の事情がある者に対して条例により保険税の減免(地方税法717条)又は徴収猶予(地方税法15条1項)をそれぞれすることができる。さらに,特別の理由がある者に対しては,一部負担金の減免又は徴収猶予をすることができる(法44条)。
市町村が行う国民健康保険に関する収入及び支出は,市町村の一般会計から分離して特別会計を設けなければならず(法10条),市町村は,保険料の減額賦課・保険税の減額(地方税法703条の5)により被保険者からの保険料・保険税収入が減少した場合には,減収分を基礎として算定した額を,市町村の一般会計から国民健康保険に関する特別会計に繰り入れなければならない(法72条の3第1項)。これに対し,保険料の減免又は徴収猶予・保険税の減免(地方税法717条)又は徴収猶予(地方税法15条1項)がされ,保険料・保険税収入が減った場合,また,一部負担金の減免がされ,その被保険者が保険医療機関等に支払う一部負担金が減り(法44条2項),国民健康保険特別会計からの支出が増えた場合(法45条1項参照)については,上記のような一般会計からの繰り入れなどの定めはなく,市町村は,国民健康保険に関する特別会計の範囲内で収支を合わせていくことになる。
(3) 他の社会制度との関係
生活保護基準を下回る収入の者は,生活保護法による医療扶助等の保護を受けることができる。国民健康保険制度は,その他の社会保険制度及び生活保護法による医療扶助と合わせて,国民皆保険を実現しようとするものである。
(4) 一部負担金減免等の制度趣旨
以上のとおり,国民健康保険制度が,被保険者の相互扶助共済の精神に則り,個々の被保険者の疾病等により生じる経済的負担を被保険者全体において分担させることを目的とするものであって,保険料又は国民健康保険税収入を財源の理念的中心としていること,国民健康保険が強制加入であって,低所得者も被保険者となることが予定されていることから,低所得者の保険税負担に配慮し,一定の基準を満たす低所得者に対しては保険税を減額しなければならないこととされ,低額所得被保険者の保険税負担の軽減が図られていること,さらに,貧困により生活のため公私の扶助を受ける者等については,条例の定めるところにより国民健康保険税を減免することができるものとされていること(なお,これを受けて,被告においては,仙北市国民健康保険税条例及び同施行規則が定められ,世帯の収入が生活保護基準以下の者で,就学援助等の公的扶助を受けている者又は公私の扶助を受けている者と同程度の生活困窮状態にある者等については,保険税を全額免除することとされている。),法6条9号は,生活保護基準を下回る収入の者については生活保護法による医療扶助等の保護を予定して,これを市町村が行う国民健康保険の被保険者としないものとしていることなどからすると,国民健康保険制度は,生活保護を受給し得るのに自らの意思で受給しない者に対しては,これを国民健康保険の被保険者とし,保険料・保険税負担について一応,応分の負担を求めた上で,さらにその負担を軽減する措置を設けているものと解される。
そして,そもそも一部負担金は,社会保険制度がなければ診療等を受ける者が医療機関等に診療等の対価を全額支払うべきところ,上記のとおり国民健康保険制度によってその7ないし9割が保険給付で賄われることとされているため,その1ないし3割を被保険者自身が負担すれば足りることとされているものである。
このように,一部負担金が保険税・保険料と違って本来的な意味で診療等の対価の一部であることを考慮すれば,特段の事情のない限り,診療等を受ける際には一部負担金を支払うべきであって,一部負担金の減免等について定めた法44条は,減免等を認めてその分を保険給付として当該国民健康保険加入者全体の保険料・保険税等の収入から支出しても加入者相互扶助の精神に反しないと認められるだけの「特別の理由」がある場合に限って,その減免等を認めることにより,生活保護等の他の社会制度との調整を図る趣旨の規定であると解するのが相当である。
具体的には,例えば,不可抗力等による事情変更に伴い,一時的に収入を喪失し又は収入が減少するなどして一部負担金負担能力を喪失し又はこれが低下した者について,ある程度短期間のうちに収入が回復することが見込まれる場合であれば,直ちに生活保護の医療扶助等に移行させることなく,収入が回復するまでの短期間一部負担金を減免等したとしても,当該事情変更が生じる以前は保険料・保険税を負担してきたこと,また,収入が回復した後は保険料・保険税を負担することが見込まれることなどを考慮すれば,長期的視点からは加入者相互扶助の精神に反することにはならず,「特別の理由」があるものと解することができる。
これに対し,原告の主張を敷えんすれば,事情変更を要件とすべきではなく,生活保護基準を下回る収入の者に対しては,それのみを理由として継続的に一部負担金が全額免除されるべきであるということになると思われるが,前記のとおり,生活保護基準を下回る収入の者は,生活保護の医療扶助を受給することが可能であり,自らの意思で生活保護を受給しない場合であっても,保険税負担の軽減が図られているのであるから,その上更に一部負担金を継続的に全額免除するとすれば,全く又はほとんど経済的負担をせずに国民健康保険の適用を受け続けられることになり,加入者相互扶助の精神に明らかに反することとなる。
したがって,生活保護基準を下回る収入であることのみを理由としては「特別の理由」があると解することはできないというべきである。
2 以上の法44条の趣旨に照らし,本件取扱要領及びその運用について検討する。
(1) まず,本件取扱要領2条(1)ないし(4)の規定それ自体は,前記のような「特別の理由」に該当するような不可抗力等による事情変更を同条(1)ないし(3)に例示列挙し,同条(4)においてこれらが例示列挙であることを示したものと一応理解することができる。
(2) 次に,生活困難であって「一部負担金を支払うことが困難」であるかどうかについては,法44条に関する厚生省保険局の通知(昭和34年3月30日保発第21号厚生省保険局通知)において,「生活困難の認定は,地域の特殊事情,被保険者の生活実態等に即して適正に実施するよう配慮すること」とされ,また,被告自身,本件取扱要領4条2項において,「生活保護基準を目安」として生活困難の程度を判断することとしているとおり,生活保護基準を目安として判断するのが相当である。
したがって,単に世帯主の収入の多寡,世帯主の収入の減少幅のみならず,その収入によって扶養される世帯の人数及び各人の年齢,世帯主以外の者の収入の有無,ある場合はその多寡,減免の対象となる期間に本来ならば負担することが見込まれる一部負担金の額等も考慮する必要がある(生活保護法8条ないし10条参照)。
しかるに,本件取扱要領4条の別表は,単に前年の「合計所得金額」(なお,これ自体,世帯主自身の所得を意味するのか,世帯の所得の合算額を意味するのか不明確である。)及び所得の減少幅のみを考慮要素としており,当該世帯の人数等を考慮に入れる余地のないものである。
そうすると,同別表では本来考慮すべき要素が捨象されているといわざるを得ず,このような基準をそのまま当てはめることによって,生活が困難であって「一部負担金を支払うことが困難」かどうか,どの程度困難であるからどの程度減免するのかを判断するのは不適当というほかない。
(3) また,当然のことながら,減免の判断に当たっては,他の被保険者,他の減免申請者との均衡も考慮する必要がある。
しかるに,同要領の別表に従うと,例えば,同要領2条(3)又は(4)に該当し,前年の合計所得が300万円以下であった場合,所得皆無となれば全額免除され,3分の2以上減少すれば8割減額され,2分の1以上減少したときでも6割減額されるのに対し,所得減少が2分の1未満にとどまれば全く減額されないことになるが,減少幅が50%の場合には6割も減額されるのに,49%の場合には全く減免されないというのは,明らかに不均衡で不合理である。
(4) そもそも,法77条及び地方税法717条において,保険料・保険税の減免が条例等の定めるところによるとされているのと異なり,法44条において,一部負担金の減免が条例等によらせずに保険者の判断に委ねられているのは,同条の趣旨にかんがみれば,一部負担金減免の判断,特に「特別の理由」があるかどうかの判断においては,個別具体的な事情を総合的に考慮することが必要であって,画一的な基準を設け難いためなのであるから,実際に一部負担金減免の事務を取り扱う職員の便宜のために取扱要領を置くこと自体が不適切とまでは言えないとしても,その取扱要領は,想定しうる基本的考慮要素を列挙した上,個別具体的な事情を総合的に考慮する内容でなければならない。
しかるに,本件取扱要領は,同要領2条各号記載の要件に該当した場合には同要領4条の別表記載の区分に応じて別表に定める割合を減免するものとする一方で,これに該当しない申請について減免の許否をどのように判断するのかについては触れておらず,その運用において,これに該当しない申請については減免を一切認めないとすれば,それは法44条が個別具体的な事情を総合考慮することを必要として条例等によらせずに保険者の判断に委ねた趣旨に反するというほかない。
3 以上を前提に,本件処分について検討する。
(1) 証拠(甲1の7,甲1の12の1及び2,甲1の13,乙4,乙5,乙17,乙18,証人A)によれば,本件処分に至る経過として,以下の事実が認められる。
被告においては,「仙北市国民健康保険一部負担金の徴収猶予及び減免に関する事務取扱について」と題する事務処理要領があり,これによって,一部負担金の減免の決定に関して必要がある場合には国民健康保険一部負担金の徴収猶予及び減免等審査委員会(以下「審査委員会」という。)を設置して審査することとされているところ,平成18年11月20日,同審査委員会が開かれ,その当時市民福祉部市民課長であったAが,審査委員会の構成員である仙北市助役,市民福祉部長らに対し,本件申請について,原告の申請理由は母の入院に伴う看病及び専従者である母の労働力欠如により収入が減少するためとなっているが,世帯主である原告本人は個人事業を継続しており,収入の減少は母の入院によるものであること,収入の減少は,原告の申請によれば年収約175万円が約140万円に減少する見通しであるが,短期的かつ一時的に減少するとしても,本件取扱要領2条(3)にいう「収入が著しく減少したとき」すなわち本件取扱要領4条の別表に規定されている2分の1以上の減少には該当しない,したがって本件申請は不承認とすべきである旨説明した。
これに対し,審査委員会の構成員から,生活が困難であるという点については考慮しなくていいのか,また,生活保護基準に照らして検討する必要はないのかなどの意見が出たが,Aは,本件取扱要領2条(3)の「収入が著しく減少したとき」に該当しなければ,生活が困難であるかどうかを考慮する必要はない旨説明し,最終的に,本件申請を不承認とすることが同審査委員会で決定された。
この事実関係からすれば,本件処分は,T本件申請は,原告の母の休職を理由とするものであって原告本人の失業等ではないから,本件取扱要領2条(4)に該当しないこと(以下「処分理由T」という。),U原告本人の年収が約175万円から約140万円に減少する見通しであるにすぎないから,原告本人の「収入が著しく減少したとき」に該当しないこと(以下「処分理由U」という。)の2点を理由としてなされたものと認めるのが相当である。
(2) そこで,これらの処分理由について検討するに,まず,処分理由Tについては,原告の主張するとおり,原告の母が休職状態となることにより,同人を専従者として事業を行っていた原告の収入が減少する見通しなのであるから,本件取扱要領2条(4)に該当するというべきである。
次に,処分理由Uについては,被告の主張するとおり,原告本人の年収が約175万円から約140万円に減少する見通しであるにすぎないから,本件取扱要領4条の別表で定められている収入の減少割合が2分の1以上の場合に該当せず,原告本人の「収入が著しく減少したとき」に該当しない。
しかしながら,前記2(2)及び(3)のとおり,そもそも,本件取扱要領4条の別表には明らかに不均衡で不合理な結果を生じる部分があること,本件取扱要領4条の別表が本来考慮すべき要素を捨象していて生活保護基準を目安としたものになっていないことなどからすれば,本件取扱要領4条の別表を形式的に当てはめることには合理性を見い出し難いから,原告世帯の収入が生活保護基準の70.1%まで落ち込んでいる事実を全く考慮に入れず,このような本件取扱要領4条の別表に形式的に当てはめ,これに該当しないことのみを理由として本件申請を不承認とすることは,明らかに合理性を欠くというほかない。
さらに,前記2(4)のとおり,一部負担金減免の判断に当たっては,個別具体的な事情を総合考慮する必要があり,「特別の理由」があるかどうかの判断は,本件取扱要領2条各号に該当するかどうかの判断に尽きるものではないにもかかわらず,本件処分は,単に同要領2条各号に該当するかどうか,同要領4条の別表に該当するかどうかのみを形式的に検討してなされており,法44条が「特別の理由」があるかどうか等について個別具体的な事情を総合考慮するため条例等によらせずに減免許否の判断を保険者の裁量に委ねた趣旨をないがしろにするものであるというほかない。
(3) 以上より,本件処分は,著しく合理性を欠き,かつ,法44条の趣旨をないがしろにするものであって,同条による裁量の範囲を逸脱した違法なものであるというほかないから,本件処分は取り消されるべきである。

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借金返済・借金問題の解決|借金返済・債務整理ドットコム

事業の失敗など、借金を全額返済出来ない状況になったら債務整理をするしかありません。
債務整理とは多額の借金を負ったとき、多重債務に陥ったときに、債務者の再生させるいくつかの方法のことを言います。
最も有名なやり方は自己破産です。
一般の方は自己破産のイメージのみあるため、債務整理に二の足を踏みがちです。
住宅ローン特則(「住宅資金貸付債権に関する特則」)という手続きを利用して個人再生をすればマイホームを失わずに借金を整理出来る場合があります。
自分が債務整理をする場合、実績が多数ある弁護士・司法書士を探しましょう。
借金返済、借金問題を解決するなら「借金返済・債務整理ドットコム」。(http://hensai-soudan.jp/)
自己破産・個人再生以外にも任意整理・特定調停といった方法がありますので、個別に弁護士や司法書士に相談してみて下さい。

【過払い金ドットコム】で過払い金に強い弁護士を検索

過払い金(かばらいきん)とは文字通り払いすぎた金銭をいうが、特に、利息制限法の定める利率を超える高利の借入れをした借主が、本来、借入金の返済は終わったのに返済を続けたため払いすぎた金銭のこと。
消費者金融業者との間で長期間にわたってグレーゾーン金利での借入れと返済を続けている場合、過払いになっていることが多いのが現状。
消費者金融やクレジットカード会社は、弁護士や司法書士などの専門家の介入しない件で、本人に対し、訴訟外で過払い金を返還することはまずあり得ない。
過払い金に強い弁護士の検索なら「過払い金ドットコム」(http://kabarai-soudan.jp/)
本人訴訟の場合、貸金業者側の反撃に遭い、後記の民法704条に基づく利息を付さない和解に追い込まれるケースが多いといわれ、また、後掲のように、取引履歴の不開示があったり、充当関係で複雑な事案であったりすると、本人訴訟で法律上正しい金額の返還を受けることは極めて困難なのが現実。

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